出産後の過ごし方|産後6週間の休み方・体の変化・受診の目安
出産後の体では、子宮が元の大きさへ戻ろうとする動きや悪露(おろ)、会陰や帝王切開の傷の回復、ホルモンの変化などが同時に進みます。見た目には分かりにくくても、体は大きな仕事を終えた直後です。
特に産後6週間ほどは、休息を取りながら少しずつ生活を整えていく大切な時期です。ただし、回復の速さは出産方法や出血量、妊娠中からの体調、育児環境によって異なります。「産後○週になったから、ここまで動かなければ」と考えず、その日の体調を基準にしてください。
最初に覚えておきたいこと
産後の回復は「早く元の生活へ戻ること」よりも、悪露や痛み、疲れ方を観察しながら負担を調整することが大切です。退院時に医師や助産師から受けた指示がある場合は、その内容を優先してください。

産後6週間は、体調に合わせて生活を戻していく
産後の生活は、週数だけで一律に決められるものではありません。次の内容は、順調に回復している場合の考え方です。悪露が増える、傷が痛む、強い疲れが残るときは、ひとつ前の段階へ戻して休みましょう。
産後1〜2週:休息を最優先にする時期
体は回復のために多くのエネルギーを使っています
出産時には出血があり、産後は子宮の収縮と悪露が続きます。会陰や帝王切開の傷がある場合は、その治癒も同時に進みます。起きている時間を増やすより、授乳や食事、トイレ以外は横になって休める環境を整えることが優先です。
授乳と睡眠は、続けやすい方法を選びます
授乳姿勢は、傷や腰へ負担がかかりにくい形を助産師に確認すると安心です。赤ちゃんが眠った時間に短く横になるだけでも、休息時間を確保できます。母乳パッドなども使いながら、着替えや洗濯の負担を減らしましょう。
家事は自分で抱え込まず、先に分担します
洗濯、食事の準備、買い物、上の子の送迎などは、家族や身近な人へ具体的に頼みます。頼れる人が少ないときは、自治体の産後ケア事業、家事・育児支援、助産師訪問など、地域で利用できるサービスを早めに確認してください。
産後3〜4週:軽い家事をひとつずつ試す時期

活動量は「少し物足りない」と感じるところで止めます
掃除機を1部屋だけかける、調理の下ごしらえだけ行う、洗濯を1回だけ回すなど、作業を小さく分けます。ひとつ終えたら10〜15分ほど座る、または横になり、悪露や痛み、疲れ方に変化がないか確認してください。
同じ姿勢を続けず、授乳姿勢も見直します
立ち続けることや、前かがみの姿勢が続くことは、腰や首、肩への負担になります。家事の途中で腰掛ける、授乳クッションを使う、赤ちゃんを抱き上げるときは体へ近づけてから立つなど、日常の動きを小さく整えます。
動悸・めまい・強い疲れを感じたら
すぐに作業を止め、安全な場所で横になって休み、水分を取ります。症状が強い、繰り返す、息苦しさや胸の痛みを伴う場合は、塩分摂取だけで様子を見ず、出産した医療機関などへ連絡してください。
産後5〜6週:健診後に生活範囲を少しずつ広げる時期
産後健診を生活再開の目安にします
産後健診では、子宮の戻り方、悪露、傷の状態、血圧、貧血の可能性、気持ちの落ち込み、授乳や育児の困りごとなどを確認します。産後2週間と1か月頃に行う場合がありますが、医療機関によっては1か月健診のみです。
外出は短時間から始めます
健診で問題がなく、体調も安定していれば、近所の散歩や短い買い物から始めます。最初は30分以内をひとつの例として、帰宅後に強い疲れや悪露の増加がないか確認します。抱っこ、ベビーカー、荷物を持つ人を分けることも負担軽減につながります。
家事と育児は、回復後も分担を続けます
家族で予定を共有し、夜間の対応や買い物、食事作りなどを交代できる形にします。家の中に、授乳後すぐ横になれる休息場所を作っておくと、疲れが一人へ偏りにくくなります。
産後に起こりやすい体の変化とケア

産後は、悪露、傷の痛み、便秘、尿もれ、腰痛、肌や髪の変化などが重なることがあります。よく見られる変化であっても、強さや続く期間には個人差があります。困っている症状を健診まで我慢せず、早めに相談することが大切です。
| 体の変化 | 起こりやすい時期 | 自宅でのケアと相談の目安 |
|---|---|---|
| 悪露(おろ) 子宮内に残った血液や組織などが排出されます。 |
産後すぐから数週間。量や色の変化には個人差があります。 | ナプキンをこまめに替え、外陰部を清潔にします。湯船へ入る時期は退院時の指示や産後健診で確認してください。量が急に増える、悪臭、発熱、強い腹痛がある場合は受診します。 |
| 会陰・帝王切開の傷の痛み 引きつりや、座ったときの違和感が出ることがあります。 |
産後すぐから数週間。傷の範囲や出産方法で異なります。 | 傷を清潔にし、楽な姿勢を選びます。ドーナツクッションは楽になる場合に使用します。赤み、腫れ、熱感、膿、傷が開く感じ、痛みの悪化があれば医療機関へ連絡します。 |
| 抜け毛 妊娠・出産に伴う毛周期の変化で増えることがあります。 |
産後数か月頃から目立ち、時間をかけて落ち着くことが多い変化です。 | 頭皮を強くこすらず、食事と休息を整えます。頭皮マッサージは心地よい強さにとどめます。円形に抜ける、頭皮症状が強い、長く改善しない場合は皮膚科へ相談します。 |
| 便秘・痔 水分不足、活動量の低下、排便への不安などが重なります。 |
産後早期から起こることがあります。 | 水分をこまめに取り、芋、豆、きのこ、根菜、果物などを無理のない範囲で食事へ取り入れます。強い痛みや出血、便秘が続く場合は相談してください。 |
| 腰痛 筋力の変化に加え、授乳や抱っこの姿勢が負担になります。 |
産後早期から続く場合があります。 | 抱き上げるときは赤ちゃんを体へ近づけ、膝と股関節も使います。軽いストレッチや骨盤ベルトは、傷や体調を確認し、専門家の助言を受けて使います。 |
| 尿もれ 妊娠・出産で骨盤底へ負担がかかり、尿を支える力が弱くなることがあります。 |
産後早期から数か月以上続く場合があります。 | 痛みがなく医療者から制限を受けていなければ、骨盤底筋をやさしく締める練習を行います。改善しない、排尿痛や残尿感がある場合は、産婦人科や泌尿器科へ相談します。 |
| 肌の乾燥・かゆみ ホルモンや生活リズムの変化が影響することがあります。 |
現れる時期や続く期間には個人差があります。 | 低刺激の保湿剤を使い、熱い湯や強い摩擦を避けます。食事、睡眠、ストレスもできる範囲で整えます。発疹が広がる、強いかゆみが続く場合は皮膚科へ相談します。 |
痛みをいたわりながら始める産後の体操

子宮が縮むときの痛みは、我慢しすぎない
出産後2〜3日ほどは、子宮が元の大きさへ戻ろうとする収縮で、生理痛に似た痛みが強くなることがあります。授乳中に強く感じる場合もあります。
鎮痛薬は、授乳の有無や持病、ほかの薬との組み合わせを確認する必要があります。市販薬を自己判断で重ねず、医師・助産師・薬剤師へ相談してください。急に強くなった痛み、発熱、悪臭のある悪露を伴う場合は受診します。
最初は呼吸・肩・足首から
1ゆっくりした呼吸を5回
仰向けや横向きなど楽な姿勢になり、鼻から静かに吸い、口から細く長く吐きます。お腹を無理に大きく動かさず、傷や腰に痛みが出ない範囲で行います。
2肩を後ろへ5回ずつ回す
両肩を耳へ近づけるように上げ、後ろへゆっくり回して下ろします。首へ力を入れず、授乳や抱っこで固まりやすい肩まわりを小さく動かします。
3足首を左右10回ずつ動かす
仰向け、横向き、または椅子に座った姿勢で、つま先をゆっくり上下させるか、足首を小さく回します。脚を高く持ち上げる必要はありません。
1〜3を1セットとして、体調がよい日に1セットから始めます。2セット行う場合も、疲れや痛みが出た時点で終了してください。
骨盤底筋は、痛みのない小さな動きから
骨盤底筋は、尿道・膣・肛門の周りを下から支える筋肉です。排尿を途中で止める練習は繰り返さず、椅子やベッドで楽な姿勢になり、息を止めずに下からやさしく引き上げる感覚を使います。
医療者から運動制限を受けておらず、傷や骨盤周りに痛みがなければ、5秒ほど締めて力を抜く動きを最大10回まで行います。感覚が分からない、尿もれや骨盤の重さが続く場合は、産婦人科や女性の骨盤底を扱う理学療法士などへ相談してください。
運動を中止するサイン
痛み、悪露の増加、めまい、息苦しさ、傷の違和感、骨盤の強い重さが出たら中止します。帝王切開、深い会陰裂傷、大量出血、妊娠高血圧症候群などがあった場合は、開始時期を医療者へ個別に確認してください。
授乳は「たくさん出すこと」より、親子に合う方法を探す

初乳から成乳への変化は、数日かけて進みます
出産後の最初に出る初乳は黄色みがあり、量が少なく見えることがあります。その後、数日かけて母乳量や色が変化します。分泌の増え方には個人差があり、見た目だけで「足りない」と判断する必要はありません。
赤ちゃんが乳首だけでなく乳輪まで深く含む「ラッチオン」がうまくいくと、母親の痛みが減り、赤ちゃんも飲みやすくなります。吸いつきが浅い、乳首が強く痛む、赤ちゃんの体重やおしっこの回数が気になるときは、助産師や授乳支援の専門職へ確認してもらいます。
授乳と搾乳の基本
赤ちゃんの欲しがるサインに合わせる
口を動かす、手を吸う、顔を左右へ向けるなどのサインを見ながら授乳します。回数や間隔だけでなく、赤ちゃんの体重増加、おしっこ、授乳後の様子を合わせて見ます。
搾乳は必要なときに行う
赤ちゃんが飲めない、乳房が張ってつらい、医療者から指示がある場合などに、手搾りや搾乳機を使います。授乳後に毎回「残った母乳を出し切る」必要はなく、必要以上の搾乳は分泌過多や張りにつながることがあります。
水分と食事は、無理な決まりを作らない
のどの渇きに合わせて水分を取り、主食・主菜・副菜を組み合わせます。水分量を一律に決めたり、特定の食品だけで母乳を増やそうとしたりせず、体調と尿の色なども見ながら補給します。
乳房の痛み・赤み・発熱があるとき
乳房が熱を持つ、赤くなる、しこりや強い痛みがある、発熱や悪寒を伴う場合は、乳腺炎の可能性があります。授乳姿勢と吸いつきを確認し、締め付けの強い下着を避けます。
強く押すマッサージや、必要以上に搾って「空にする」ことは避けます。脂肪分や甘い物だけを原因と決めて厳しく制限するのではなく、休息を取り、症状が12〜24時間で改善しない、または悪化する場合は医療機関へ相談してください。診察結果により、抗菌薬や膿を出す処置が必要になる場合があります。
産後の食事は、体力回復と授乳を支える組み合わせに

産後は、出産で消耗した体の回復と、授乳中であれば母乳を作るための栄養が必要です。一方で、毎日細かく栄養計算をすることは大きな負担になります。まずは食事を抜かず、主食・主菜・副菜をそろえるところから始めます。
授乳中のエネルギーとたんぱく質の目安
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、授乳婦のエネルギー付加量は1日350kcal、たんぱく質の推奨付加量は1日20gです。18〜49歳女性のたんぱく質推奨量50gに付加量を加えると、授乳中は1日70gがひとつの目安になります。
ただし、母乳と育児用ミルクの割合、体格、活動量、体重変化、持病によって必要量は変わります。数字だけに合わせるのではなく、医師や管理栄養士から個別の指示がある場合は、その内容を優先してください。
無理なくそろえる1日の食事例
朝:ご飯・みそ汁・焼き魚・ほうれん草のお浸し・納豆
昼:玄米おにぎり・鶏ささみサラダ・温野菜スープ
間食:ヨーグルトと果物・ナッツ
夕:豚しゃぶサラダ・豆腐と野菜の煮物・ご飯
毎食をこの形にそろえる必要はありません。冷凍野菜、缶詰、納豆、豆腐、卵、カットフルーツ、宅配食なども使い、調理の負担を減らしてください。
産後に意識したい主な栄養素

次の栄養素は、出産後の体力回復や日々の健康を支えます。ひとつの食品へ偏らず、複数の食品から組み合わせて取り入れます。
| 栄養素 | 主な食品 | 体の中での主な役割 |
|---|---|---|
| 鉄 | 赤身の肉、かつお、あさり、小松菜、大豆製品など | 赤血球の材料となり、酸素を運ぶ働きを支えます。出産時の出血や貧血を指摘された人は、必要量や薬について医師へ確認します。 |
| ビタミンC | 柑橘類、キウイ、いちご、ピーマン、ブロッコリーなど | 野菜や大豆製品に含まれる鉄の吸収を助け、皮膚や血管などを作る働きにも関わります。 |
| ビタミンB12 | 魚介類、肉、卵、乳製品など | 赤血球を作る過程や神経の働きに関わります。動物性食品を取らない人は、医師や管理栄養士へ相談します。 |
| たんぱく質 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など | 筋肉、皮膚、血液などの材料となり、傷や体力の回復を支えます。 |
| カルシウム | 牛乳、ヨーグルト、干しえび、水菜、木綿豆腐など | 骨や歯の材料となるほか、筋肉や神経の働きにも関わります。授乳中も日々の食事から不足しないよう意識します。 |
| 葉酸 | 春菊、ほうれん草、ブロッコリー、納豆など | 細胞が作られる過程や赤血球の形成に関わります。 |
鉄の「1日18mg」は一律の基準ではありません
2025年版の食事摂取基準では、授乳婦の鉄の推奨付加量は1日2.0mgです。実際の推奨量は年齢や月経の有無で変わります。貧血がある場合は食事だけで補えないこともあるため、血液検査や鉄剤の必要性を医師へ確認してください。
体重は短期間で戻そうとしない
出産直後は、赤ちゃん、胎盤、羊水などに相当する分の体重が減り、その後は体内の余分な水分などが少しずつ変化します。減り方には大きな個人差があるため、「産後2〜4か月で元へ戻す」と期限を決める必要はありません。
産後健診で運動に問題がないことを確認したら、短い散歩ややさしい産後体操から始めます。20分のウォーキングも一例ですが、10分を2回に分けるなど、睡眠不足や授乳の状況に合わせて調整してください。
健診と地域の支援を、早めに利用する
産後健診や地域の支援は、異常がある人だけのものではありません。体の回復、授乳、睡眠、気持ちの変化、育児環境を一緒に確認し、困りごとが大きくなる前に相談する機会です。
産後健診で伝えたいこと
産後2週間頃:悪露、傷、血圧、授乳、睡眠、気持ちの落ち込み、育児の不安などを確認します。実施の有無は医療機関や自治体によって異なります。
産後1か月頃:子宮や傷の回復、貧血の可能性、血圧、授乳、日常生活や運動を再開する時期などを確認します。
健診を待たず、すぐ相談・受診したいサイン
- 1時間にナプキン1枚以上がいっぱいになる出血、卵より大きな血の塊、急に増えた出血
- 悪臭のある悪露、38℃以上の発熱、強い下腹部痛
- 治まらない強い頭痛、目がかすむ・光が見えるなどの見え方の変化
- 胸の痛み、息苦しさ、脈が速い、失神しそうな強いめまい
- 片脚だけの腫れ、赤み、熱感、ふくらはぎの強い痛み
- 乳房の強い痛み・赤み・熱感に、発熱や悪寒を伴う
- 排尿時の強い痛み、尿が出にくい、頻尿と発熱がある
- 自分や赤ちゃんを傷つけたい気持ちがある、強い不安や落ち込みで日常生活が難しい
胸の痛みや呼吸困難、意識が遠のく、自分や赤ちゃんを傷つける危険が迫っているなど、緊急性が高い場合は、ためらわず119へ連絡してください。ここにない症状でも「いつもと明らかに違う」と感じたら、出産した医療機関などへ相談します。
地域で利用できる支援の例
助産師外来・母乳外来:授乳姿勢、乳房の痛み、母乳量への不安、母体の回復などを相談できます。
産後ケア事業:宿泊型、通所型、訪問型などがあり、休息、授乳、育児の支援を受けられます。対象や料金は自治体ごとに異なります。
こども家庭センター:妊産婦や子育て家庭の相談を受け、必要な支援や地域のサービスにつなぎます。旧「子育て世代包括支援センター」から名称が変わっている地域があります。
地域子育て支援拠点・子育てサークル:親子の交流、育児相談、地域の情報交換などに利用できます。
まとめ|回復を急がず、休むことも産後ケアのひとつ
出産後の体は、子宮や傷の回復、悪露、授乳、ホルモンの変化、睡眠不足など、複数の負担を抱えています。家事や運動を早く再開することよりも、その日の悪露、痛み、疲れ方、気持ちの変化を確認し、必要な休息を取ることが大切です。
食事では、鉄、たんぱく質、カルシウム、ビタミン類などを、身近な食品から組み合わせて取ります。授乳中も、特定の食品や厳しい食事制限へ偏らず、食事と水分を無理なく続けられる形に整えます。
一人で抱え込まず、家族、医療機関、助産師、自治体の産後ケアや相談窓口を利用してください。休むこと、人へ頼ること、早めに相談することも、母子の健康を守る大切な産後ケアです。
注意事項
この記事は、産後の一般的な過ごし方を紹介するもので、診断や個別の治療を目的としたものではありません。出産方法、合併症、出血量、傷の状態、授乳状況によって必要なケアは異なります。退院時の指示と担当医療者の判断を優先してください。
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