古典ヨーガ入門:四大ヨーガ(カルマ・バクティ・ジュニャーナ・ラージャ)を理解して深める

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ラージャ・ヨーガの基本:瞑想と心の落ち着きを学ぶ

ヨガ

伝統的な四大聖典ヨーガ(古典ヨーガ)

古代インドのヨーガ思想は非常に幅広く、流派や時代によって「何を中心に置くか」が変わります。 その中で学びの入り口としてよく紹介されるのが、行い・愛・叡智・瞑想という4つの道です。 どれか一つが正解というよりも、気質や生活環境に合わせて「入りやすい扉」が違う、と捉えると理解しやすくなります。

ここでは、日常に落とし込みやすい言葉で、それぞれの目的と実践イメージを整理していきます。

カルマ・ヨーガ(奉仕のヨーガ)

カルマ・ヨーガは、「行為(カルマ)」そのものを整える道です。 何かをするとき、結果や評価だけに気持ちが引っぱられると、心はすぐに忙しくなります。 そこで「いま自分ができる最善を丁寧に行う」「終わったら手放す」という姿勢を育て、執着や自己中心性を少しずつ薄めていきます。

カルマ・ヨーガの実践の一例

実践のポイントは「大きな奉仕」よりも、日常の小さな行為の質です。 たとえば次のように、無理のない範囲で続けます。

  • 家族や同僚に、見返りを期待せずに一つだけ親切をする
  • 「ありがとう」を言う前に、相手の時間や労力を一度思い出す
  • 結果が気になったら「今は自分の役割に戻る」と心の中で言い直す
  • 自分の機嫌を他人に預けない(疲れたら休む、境界線を守る)

こうした積み重ねが、心の中の焦りや比較を静め、自然と呼吸が深くなる土台になります。

 

ヨガ

 

バクティ・ヨーガ(愛のヨーガ)

バクティ・ヨーガは、「愛や信頼の力で心を整える道」です。 ここでいう神への帰依は、特定の宗教だけに限定されるものではなく、 「自分より大きなもの(自然・いのち・真理・祈り)」に心を向ける、という広い意味で理解されることもあります。 感謝や敬意が育つと、心の緊張がほどけ、過剰な自己批判が弱まっていきます。

バクティ・ヨーガの実践の一例

ポイントは「上手に祈る」ことではなく、心が温かくなる方向へ向け直すことです。

  • 朝、1分だけ呼吸を整え「今日も生きている」ことに感謝する
  • 好きな聖歌・マントラ・音楽を流し、胸のあたりの感覚を観察する
  • 誰かの幸せをそっと願う(メッタのような慈しみの実践)

「愛を増やす」というより、「愛が出てきやすい状態に整える」イメージで続けると、日常のストレス耐性が上がります。

ジュニャーナ・ヨーガ(叡智のヨーガ)

ジュニャーナ・ヨーガは、学びと洞察で「自分の思考のクセ」を見抜く道です。 「わたしとは何者か」「何に振り回されて苦しくなるのか」を、哲学的な問いや自己観察で深めていきます。 ここで大切なのは知識を増やすこと以上に、知識を使って心の誤解(思い込み)をほどくことです。

ジュニャーナ・ヨーガの実践の一例

実践は「難しい答えを出す」より、問いを丁寧に扱うことが中心です。

  • 夜に3分だけ静かに座り「今日いちばん反応した出来事」を思い出す
  • その時の心の言葉を一文で書き出し「事実」と「解釈」を分ける
  • 聖典や哲学書の一節を読み、生活の中の具体例に置き換えてみる

継続すると「考えが湧く=悪い」ではなく、「考えが湧いた後に戻れる」力が育っていきます。

ラージャ・ヨーガ(王者のヨーガ)

ラージャ・ヨーガは、心の働きを整え、深い静けさへ向かう道として語られます。 インド哲学の解説では、パタンジャリの体系(ヨーガ・スートラ)をラージャ・ヨーガと呼ぶ説明もあり、 そこでは「自己統御(self-rule)」へ至る道筋として、倫理・呼吸・集中・瞑想などが段階的に扱われます。

なお、パタンジャリ文献の成立年代は研究上幅があり、特定の年に強く固定するより、 「古典期に体系化された」と捉える方が安全です。 重要なのは年代よりも、“心が散る仕組み”を理解し、戻る練習を積むという実践性です。

ラージャ・ヨーガの実践の一例

ラージャ・ヨーガの基本は、「整える → 集める → しずめる」の順で練習することです。

  1. 背骨が楽に伸びる座り方を決め、肩とあごの力を抜く
  2. 呼吸を数えて(例:吸う1〜吐く1で1回)10回だけ追いかける
  3. 雑念が出たら「出た」と気づき、責めずに呼吸へ戻す
  4. 最後に胸やお腹の感覚を30秒観察し、静けさを味わう

長時間よりも、短時間でも毎日続ける方が「戻る力」は育ちやすくなります。

ハタ・ヨーガの誕生から現代ヨーガまで

ハタ・ヨーガは、中世以降に発展した身体技法の系譜として語られることが多く、 呼吸法・浄化法・ムドラーやバンダなど、心身を統合するための実践が体系化されていきました。 代表的な根本文献として『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』(15世紀頃)が挙げられ、 以後もさまざまな伝統が積み重なり、現代の「ポーズ中心のヨガ」にも影響を与えています。

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ハタ・ヨーガは「ハ(ha)=太陽」「タ(tha)=月」と説明されることがあり、 これは心身の両極(活力と静けさ、緊張と弛緩)のバランスを象徴的に表しています。 一方で、語源や解釈には複数の説があるため、ここでは “偏りを整え、内側の調和をつくる実践”として捉えると理解しやすくなります。

アシュタンガ・ヨーガ

現代に広く知られるアシュタンガ(ヴィンヤサ)・ヨーガは、 呼吸と動きを連動させた流れ(ヴィンヤサ)で、決まったシークエンスを実践していくスタイルとして広まりました。 学術的には、パッタビジョイスの体系が、クリシュナマチャリアの指導の流れから発展したものとして位置づけられています。 そのため「動く瞑想」と呼ばれる背景には、動きの最中に注意を一点へ戻し続けるという訓練性があります。

ポイントは、勢いだけで進むのではなく「呼吸が先・動きが後」になっているかを毎回確認することです。 それができると、強度があっても心は散りにくくなります。

アイアンガー・ヨーガ

アイアンガー・ヨーガは、アーサナの精密なアライメント(身体の配置)を重視し、 ベルト・ブロック・ボルスターなどのプロップ(補助具)を活用して安全性と理解を深めていく方法として知られます。 形をそろえることが目的ではなく、骨格・呼吸・感覚を丁寧にそろえることで、 “余計な力みが抜けた状態で安定する”という体験へつなげていきます。

初心者や身体の制限がある方でも補助具で調整しやすく、「できない」を減らしながら学びを継続しやすい点が大きな特徴です。

パワー・ヨーガ

パワー・ヨーガは、アシュタンガ系の流れを背景にしつつ、 運動強度やフィットネス性を前面に出した呼び方としてアメリカで広がりました。 テンポよく動き、汗をかき、筋持久力や心肺機能にも働きかけやすい一方で、 「呼吸が乱れたまま進む」「頑張りすぎて関節に負担が乗る」なども起きやすいので、 その日の体調に合わせた調整(休む勇気)が実践の質を上げます。

パワーヨガ

シヴァナンダ・ヨーガ

シヴァナンダの伝統は、アーサナだけでなく、呼吸・休息・食・思考と瞑想を含めた 生活全体の整えとしてヨーガを捉えます。 公式には、弟子スワミ・ヴィシュヌデヴァーナンダが、 日常に取り入れやすい形として「5つのポイント(適切な運動・呼吸・休息・食事・思考と瞑想)」へ整理した説明があります。

体を整えることと、心の癖を整えることを同じくらい大切に扱うので、 「運動だけ」「精神性だけ」に偏らず、バランス感覚を育てやすいスタイルです。

クリパル・ヨーガ

クリパル・ヨーガは、やさしい流れや呼吸とともに、 「判断せずに自分を観察する」姿勢を重視するアプローチとして知られます。 そのため、できる・できないの評価ではなく、 「いまの自分に何が起きているか」を丁寧に感じ取りながら進めることで、リラクゼーションや癒しにつながりやすくなります。

体がかたい日、気持ちが落ち着かない日でも、 「その状態を責めないで観察する」こと自体が実践になる点が、クリパルらしさです。

アヌサラ・ヨーガ

アヌサラ・ヨーガは、思いやり(ハート)をテーマに、 アライメント原則を活かしながら「心と体を一緒に整える」方向へ進める現代ヨーガの一つです。 ポーズの中で「安定感」と「広がり」を同時に探すため、ゆったりした流れの中でも深い集中が生まれやすくなります。

まとめ

四つの道(カルマ/バクティ/ジュニャーナ/ラージャ)は、入口は違っても、最終的には 心と体の統合を目指す点でつながっています。 「自分はどの扉から入ると続けやすいか」を知ることが、ヨーガの理解をいちばん早めます。

そして現代ヨーガの多様なスタイルは、古典の流れをそれぞれの時代と場所で翻訳してきたものでもあります。 強く動く日も、静かに座る日も、学ぶ日も、奉仕する日も―― 自分の生活に合う形で選び直せることが、ヨーガを長く楽しむコツになります。

 

 

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